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共存と調和

壊すか残すかではなく
人工か自然かではなく
その間にある「共存と調和」の
魅力を引き出す

共存と調和

東シナ海に浮かぶ五島列島の最南端である福江島。港から目と鼻の距離にある計画地周辺は、強い日差しと潮風にさらされ町全体が色褪せた風合いで、島特有の時間がとまったかのような懐かしさを感じる場所であった。また、温暖多雨な気候のこの島には豊かな自然があり、隣の喫茶店の壁面は建物を覆い尽くすように蔦が生い茂り植物が建物を飲み込んでしまいそうな勢いであった。かつて住宅として使われていた築50年近い建物をホテルとして改修する上での手掛かりとなったのはそんな町の風景から連想した“植物に浸食された廃虚”のイメージだ。

例えば数100年後、自然に晒され続けたこの建築が最後に残った躯体の姿を想像する。まず先に朽ちてなくなってしまうであろう、仕上げやサッシなどを撤去し、サッシのあった痕跡が残る開口部まわりはコンクリート壁を削り、人工的な線を消していった。そして元々の外壁ラインから室内側にセットバックした位置に新たな引き戸を配置することで、この島の風土に合った植物が自生する場とそれらの植物によって生まれる心地のよい木陰をつくり、人と植物のための場とした。建物内部が屋外化した廃墟のような中と外の曖昧な領域をつくり、それらを繋ぐ役割を木々や草花といった自然に担ってもらう。ここでは、自分たちのデザインで完成させないことや、自然に委ねる余地をもつことで“自然と共創する”というデザインにおいての新たな関係性を意識した。

使用できる材料に制限があるのも離島ならではだった。島内で流通していないもの、生産できないものを使うと運送費や納期に大きな影響があったので、工務店さんをはじめ、地元の職人さんに協力していただき、素材から作り方まで相談しながらこの地域で無理なく実現できるデザインに変更していった。そんな経験からは地域における地産地消的なものつくりが本質的な豊かさに繋がることなど気付かされることも多かった。このプロジェクトでは、壊すか残すかではなく→壊しながら残す。人工か自然かではなく→人工の中にある自然。など両者の間にある「共存と調和」による魅力を引き出し、共創の時代のデザインについて考えた。

data

竣工

2020年05月

所在地

長崎県五島市

用途

宿泊施設

構造

鉄筋コンクリート

階数

地上3階建

設計期間

2018.12-2019.11

施工期間

2019.11-2020.5

延床面積

152.52㎡

credit

施工

綴組

施工協力

賀茂クラフト

北川工務店

近藤電業

アクティブ

構造設計

堀江建築設計

設備設計

島津設計

照明設計

Filaments

製作照明

レガレリア

植栽

SOLSO

写真

長谷川健太

担当者

吉田 愛

谷尻 誠

守屋 優記

media

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