どこまでも続く風景を見る
愛知県にある歯科クリニックの計画。クリニックという作業動線を重要視する必要がある空間において、我々に何が出来るのかについて考えた。
平面計画が使い手の要望から決まっていく中で、患者さんの視点から歯科クリニックを見てみると、待つ時間と診察を受ける時間があることに着目した。それは機能的な視点から導かれる平面と自由な断面の関係によって歯科について考えるということであった。
我々は大きな小屋裏空間を設計することで、小屋裏が天井高のある待合や各諸室に自然光を導く役割を果たすと同時に、患者さんが診察されている時に、天井を見続けるのではなく、どこまでも続いていくような風景を見る状況へと変換することを断面によって考えた。またその断面形状によって空気の流れを生み出し、夏期は暖かい空気を上部へと排気し、冬期は暖かい空気を下層部へと引き込む装置としても機能させた。
小屋裏という一見無関係な場所を設計するということが、人のいる場所といない場所、その状況自体を再考することであり、今回の歯科での回答を見つけることにつながったようにも思う。
クリニックという制約があることが、あたかも厳しい敷地条件という制約の中に建築をつくる時のような期待感へと変換すること、つまりは我々の向き合い方を設計すること自体が、建築をつくっていく上でとても重要なことではないかと感じている。多くのルールという制約が、むしろ自由を獲得するための、きっかけとなるような、そんな思考を求め続ける事で、新しい建築の姿を今後も探し続けていきたいと考えている。