まちの保育園キディ湘南C/X

余白を所有する保育の場

一見無関係な場所にこそ
本当の豊かさが潜んでいる
機能を制約しない
余白を所有する保育の場が
自らが発想するきっかけとしての
場となることを願う

余白を所有する保育の場

幼い頃の体験として、小さな路地や、庭の先、小屋の陰、床下、空き地を、自分たちの格好の遊びの場として使っていた記憶がある。考えてみれば、遊ぶために与えられた公園で遊ぶことが出来たにもかかわらず、自然と遊び方が発見される場にこそ、楽しみの本質があったように思う。そんな、自らが発想するきっかけとしての場を設計したいと考えた。

0歳児から5歳児に必要な保育室面積の基準に沿ってゾーニングをしたものの、決められた範疇での計画になってしまうため、保育室以外を設計することで保育の場をつくり出すことを提案した。事務室やトイレはもちろんのこと、絵の部屋(アトリエ)、音楽の部屋、水の部屋(浴室)、展望の部屋などなど、色々な子供サイズの建築を用意した。園の方々と話し合い計画することで、大きな空間の中に町をつくり出している。建物と建物の問に自然と生まれた広場や路地空間を保育の部屋として計画することで、開かれた保育の場となった。床には、子供たちが床自体をも遊び道具として使いたくなるようなグラフィックアートワークで、町全体を保育の場として成立させている。

今回、必要である場所以外を積極的に設計したことによって、必要とされる保育の場が生まれ、結果として機能を制約しない余白を所有する保育の場が出来たのではないかと思う。そんな一見無関係な場所にこそ、本当の豊かさが潜んでおり、今後あらゆる建築を設計していく上でも、無関係な場所について考えるということに、今とても興味がある。

data

竣工

2011年03月

建設地

神奈川県藤沢市

種別

保育園

工事期間

2010.12-2011.03

敷地面積

1865.68㎡

建築面積

1204.79㎡

床面積

1777.33㎡

credit

施工

スルガコーポレーション

設備設計

島津設計

写真

矢野 紀行

担当者

谷尻 誠

吉田 愛

木村 直樹

番場 俊宏(エイバンバ )

media

新建築 2011年6月号

商店建築 2013年1月号