余白を所有する保育の場
幼い頃の体験として、小さな路地や、庭の先、小屋の陰、床下、空き地を、自分たちの格好の遊びの場として使っていた記憶がある。考えてみれば、遊ぶために与えられた公園で遊ぶことが出来たにもかかわらず、自然と遊び方が発見される場にこそ、楽しみの本質があったように思う。そんな、自らが発想するきっかけとしての場を設計したいと考えた。
0歳児から5歳児に必要な保育室面積の基準に沿ってゾーニングをしたものの、決められた範疇での計画になってしまうため、保育室以外を設計することで保育の場をつくり出すことを提案した。事務室やトイレはもちろんのこと、絵の部屋(アトリエ)、音楽の部屋、水の部屋(浴室)、展望の部屋などなど、色々な子供サイズの建築を用意した。園の方々と話し合い計画することで、大きな空間の中に町をつくり出している。建物と建物の問に自然と生まれた広場や路地空間を保育の部屋として計画することで、開かれた保育の場となった。床には、子供たちが床自体をも遊び道具として使いたくなるようなグラフィックアートワークで、町全体を保育の場として成立させている。
今回、必要である場所以外を積極的に設計したことによって、必要とされる保育の場が生まれ、結果として機能を制約しない余白を所有する保育の場が出来たのではないかと思う。そんな一見無関係な場所にこそ、本当の豊かさが潜んでおり、今後あらゆる建築を設計していく上でも、無関係な場所について考えるということに、今とても興味がある。