高床の低い家
古くから日本で用いられてきた建具によって外と内の繋がりをコントロールする住まいや高床式の住宅は、高温多湿な日本の気候に適しているが、家と家、人と人との距離感が豊かであったかつての日本の住環境とは違い、現在ではその従来のメリットが成立しづらくなってきている。
今回のプロジェクトでは、分譲地という外に開きにくい環境の中で、フロアレベルを調整した高低差のある中庭に大きく開きながらも、周辺環境からも緩やかに守られている新しい高床の住宅を提案した。採光なども考慮してLDKと寝室にレベル差を設け、LDKの部分を高床とし、そのボリュームの下は子どもが遊ぶことのできるピロティとした。これから家を買うという人たちにとって、子どものためのスペースは非常に重要である。このピロティは中庭と連続しているので、室内からの視線も届き、安全なスペースとなっている。また、高床部分の柱はSE構法の現しとし、柱に金物の下駄を履かせることでメンテナンスが用意となるディテールとした。
建築家の作品性と、分譲住宅という商品性は、本来なかなか折り合いが付かず、白か黒かと分けて考えてしまいがちであるが、その中間にある価値について模索した。われわれは、この分譲住宅のモデルハウスプロジェクトを通じて、日本人がもつ豊かな住環境という潜在意識に耳を澄ませ、コストバランスに優れ世に広く受け入れられる商品住宅としての設計と、建築家の建築作品としての表現も両立することを両立することを目指した。
この様な取り組みをきっかけとして、建築家のつくる住宅が少しでも身近になってほしいと願っている。