行灯としての建築
広島県北部の小さな街の静かな裏通りに位置する和風創作料理の飲食店である。
当初はビルドインでの店舗改装を検討していたがショッピングセンターや飲食店で賑わう通りより一筋入った静かなこの場所をオーナーは気に入り新築での計画を考える事となった。
夜になると暗がりになってしまうこの場において、商空間としての機能を持たせる方法として我々は、周囲へ灯りを灯し建物そのものが行灯の役割を果たす事の出来る形態を意識して計画を進めた。
コスト・工期等の様々な条件下において、あらゆる面での合理化をはかる事が必要とされたため構造が空間を創り出す要素になる様、検討を重ね可能な限りの作業の簡易化を図った。ツーバイフォーの材料で門型フレーム25個を使い455mmピッチに並べるだけの単純なフレームは構造でありながら、そのまま仕上げとなり無機質になりがちな構造の中で柔らかい表情を見せている。開口部はポリカボネート波板とし店内の温熱環境に配慮してフレームを挟んだ二重貼りとした。それは同時に曲線の重なりによるフィルター効果を生む。
このシンプルなフレームの箱は人が入る事によって完成する事を意図し 又、人が入る事によって外部に対しても発信出来る新しい形態の店舗として静かな裏通りに驚きや喜びを与えている