都市の隙間を自然環境として再評価する
都市に建つ小さな住居の建替え計画である。
旧家は木造平屋で小さな窓が南と東側に向けていくつかあったが、周辺環境の中高層化によって、生活するための十分な光と風が得られなくなってしまっていた。クライアントは、光と風に溢れた健康的な生活を望んでおり、我々は、時代と共に周辺環境が変化しても、その希望が守られる環境デザインが必要だと考えた。
日本の都市は民法によって住戸間に1mほどの隙間ができるようになっているが、壁面ラインを少しだけセットバックすることで、その隙間を拡張し「光庭」として見立てることで、太陽の間接光によるやわらかな光、日陰を通って冷やされた涼しい風といったように、都市の隙間という一見ネガティブに思える要素であっても、客観的に見つめ直す事で、人間のための価値を発見し豊かな空間を得る事ができる。
建築は、ガラスとコンクリートという長い時間に耐える事ができるマテリアルで構成し、2枚の軒というシンプルな形態によって、自然環境との連続性を高めた空間とした。
敷地は3方を隣地建物のコンクリートの壁やコンクリートブロックの塀に囲まれていてグランドレベルは既に中庭のように守られた環境ができていて、解放しても十分なプライバシーを確保することができた。また、軒を深く出すことで周辺の集合住宅の高い位置からの視線を遮ると共に、夏季日射を遮り、ガラスの壁を雨から守り美しい状態を保っている。
間口が狭く細長い敷地であることから主居室を敷地奥側に配置することで、奥行きによって前面道路からの適度なプライバシーが守られ、壁面ラインを斜めに振ることで前庭を作って木を植え、陽光を浴び風にゆらめく緑を愉しむことができる場となった。
周辺環境が変化し続けたとしても、住まう人の気持ち良さは時間を超えて未来まで続く、そのような住居となることを願っている。