新たな玄関口
中国の南東部、福建省にある海岸沿いの街である厦門にホステルを計画することになった。日本では、昨今ホステルブームが到来しているが、ホステル自体がいまだチープなイメージがもたれる中国にて、新たなホステルの在り方とシーンを同時に生むような場を設計することを念頭に計画を始めた。
厦門という名前は「家の玄関」という意味で、何世紀にもわたり中国の重要な港、そして玄関口となってきた街である。今回の敷地の目の前には、緑豊かな中庭が広がっており、その敷地の魅力を最大限に生かした、新たなホステルの玄関口にしたいと考えた。
まずは、庭と接する外壁をすべて撤去し、すべて開閉が可能な開口とすることで、目の前に広がる中庭をそのまま引き込み、中と外がつながるような構成とした。玄関口の前には、日中も過ごせるパブリックな場として、日本の伝統様式である縁側のような場をつくった。
奥まったスペースには、厦門の伝統建造物に使われてきた赤レンガを用いて本棚をつくり、その内部では個々が落ちついた時間を過ごせる空間とし、日本と厦門の伝統様式が同居した場を目指した。既視感の中にある「普通」を再編集し、空間デザインの領域を超え、人の過ごし方まで意識を拡張した設計をすることで、新たな中国のホステルの玄関口となることも願っている。