眺望を引き寄せる浮床の建築
この建物は、広島市中心部より車で40分ほどの距離に位置する呉市焼山の小高い丘の上の畑の中に立っている。車一台がやっとの細い小道を上がればそこはまるで別荘地の様に自然に守られた、のどかな風景に囲まれた敷地である。北から南に向かって緩やかな勾配のある敷地は、北側は竹林の緑地帯、南側へは焼山市内を見下ろすことが出来る。
まだ20代のクライアント夫妻は、この地を永住の地に選び、出来る限り自然との関わりをもつ生活を望まれていた。我々は南側への眺望を獲得すること、地形を出来る限り壊さないこと、地耐力を最大限に活かすこと等から高床での建築の形態を導き、地盤面が本来持ついくつかの意味を無効にする事によって周囲との関係性を親密にするための方法を提案した。
1Mほど上がったフロアレベルからの南側への眺望の環境は良好なものとなり、見下ろす地盤面の意識を遠ざけることで、周囲の木々や眺望を内部に引き寄せる事を意図している。このような外部との関係性の模索の中で生まれた浮き床の建築によって外の風景を意識的に結びつけることの出来る住宅を目指した。