和の空間構成のあらたな解釈
「京都らしさ」とは古き良き伝統が受け継がれていることが魅力として語られる。しかし京都のカルチャーを例えば食という分野で語ると、和食だけでなく実は美味しい中華料理のメッカであったり、お茶ではなく意外にもコーヒーの消費量が日本一でコーヒー文化が街や生活に馴染み独自の風景を生み出していたりする現状がある。日本古来のスタイルを大切にしつつ新しいスタイル取り入れ更新し続けている様。私達が感じる京都らしさとはそういう魅力である。「暮らすように京都を感じられる空間」にしたいという要望に対し、材料の使い方や空間構成によって私達らしい魅力ある京都らしさの更新ができないかと試みた。
京都の木屋町通り東は鴨川に西は通りに面した素晴らしい立地であるが、建物は築47年と古く耐震改修しつつ元集合住宅をホテルとして改修することが求められた。フロアの西と東に2室の客室を設け、それぞれ外部へ向かうにつれて床を上げ、反対に天井は下げ、場所により鴨川と京都の町並みへの向き合い方が変化する計画とした。床を上げる事でサッシ際に川を眺めるもうひとつの居場所がうまれ、天井を傾ける事で、設備や構造、カーテンボックスなどを隠し、風景を切り取り、内土間と縁側や深い軒といった和の空間構成を現代的に解釈して用いた。仕上げとなる天井の板張り、骨材で質感を出したペイント、またファサードの綱製の格子、それらは日本古来の和の要素を踏襲しつつ、細さや、素材感、彩度の低い色見、材の選択など、様々な「置き換え」を意識的に行った。
情緒と斬新さの絶妙なバランス、そういった美意識こそがセンスであり故に伝統となり受け継がれていくのではないかと考えている。