条件が厳しいという利点
目黒碑文谷の敷地は、幹線道路に面した変形敷地であった。不定型な上に高さ制限が非常に厳しい。都市の中で建築を考える時に常に遭遇する環境ともいえる。敷地がどんな環境であったとしても、そこに対して建築がどうあるべきかと考えるとしたならば、法的な条件や敷地形状も、その場所の環境の一部と読み替えることができる。建築は環境に対して柔らかに対応し、環境とともにその場所に存在するべきではないだろうか。
私たちは、ショールームをできるだけ多くの方に見てもらうために、屈折した敷地=道路面に長い距離を持つ敷地として解釈し、可能な限りファサードの距離を確保して計画することを提案した。ショールーム特有の敷居の高さをMazdaらしい優しさとして表現するため、黒いガラス面のモダンさと木質の柔らかさを同居させることで、シャープでありながらも柔らかい、良い矛盾をつくり出した。室内はある人が見ればカフェのようでもあり、ある人が見ればショールームであり、車に興味のある方はもちろんのこと、これから車に興味を持ってもらう方のための場所でもあることを意識しながら空間をつくった。また、地下に整備工場を配し、ドライエリアを利用した明るく開放感のある空間にし、従来の工場というイメージからの脱却を計った。
完成してみれば、清潔な工場、入りやすいショールームとなり、変形敷地だったことが気にならない建築になった。すべてにいえることは、人は前提によって新しさや、利便性、快適性などを語る。
条件という前提を、敷地の環境を助長する存在として設計できるならば、その条件を魅力として語れる場所になるのではないだろうか。私たちは、その前提を日々魅力として、また豊かな環境として定義していきたいと思う。