らしさをつくりだすこと
敷地は、明治通り沿いに大きな水平方向の間口を持っていた。ここでのファサードデザインにおいて求められたのは、MAZDAらしさをつくりだすことであると考えた。
MAZDAらしさとして私たちが着目したのは、車体の曲線美であった。チーターの動きを解析し、デザインに落とし込んだ「魂動デザイン」をファサードに落とし込むことで、躍動感のある建物とすることができるのではないか。
具体的には、418mm×1250mmのアルミパネルをねじり加工し、60Mの間口に配置した。グラデーションの検討には、ARUPの協力の下、数値演算を用い、より効率的で、美しい設計の検証を行い、MAZDAデザイン本部とともに、「魂動デザイン」の表現を行った。微差のねじりと角度により、時間帯や視点によって表情を変えるダイナミックでありながら繊細さをもつ、ファサードを作り上げることができた。
このファサードは、一部が前面にせり出すような平面形状をしており、せり出したスペースにテラススペースを設けた。
このテラススペースは、縁側のように内外をゆるやかに繋ぎ、気軽に内部へと入ることができ、車に興味のある方はもちろん、興味のない方もMAZDAの車に関心を持ってもらえる開かれた作りとしている。この現代の縁側により、周辺へ開かれ地域に根付き、愛されていくことを考えた。
ショールーム内部は、黒と木のマテリアルを基調としたシンプルな構成である。車両が置かれる場所は、要素を極力減らし、必要諸室などは、洞窟のように彫り込まれた壁面部分に配置した。車を十分に堪能し、お客様と車がしっかりと対峙できる車のための空間を目指した。
様々な人々にMAZDAを体感してもらう為に、敷居を下げながら、MAZDAらしさを表現するための上品さは、損なわない、そんな相反する2つの操作が同居する空間になったのではないだろうか。