本は眠りへの誘い
本を読んでいたつもりが気がつけば眠っていた。
そんな経験は誰もが体験しているのではないだろうか。
池袋の駅前に小さなビルの一部屋に、ゲストハウスをつくる計画。眠りについて考えると、ついふかふかの布団や良い枕などを想像してしまうが、ここでは、眠る前の時間と、寝るまでの時間について思考を巡らせた。寝ている隣で大きな声で会話をされるのも困りもの、かといってお客さまに静かにして下さいと伝えることも、なにかと言いづらい。
そこで人がたくさんいても自然と互いを思いやることの出来る、静かな環境について考えた。図書館は無意識に静かな環境に対しての意識が存在している。その特性を利用して図書館に宿泊できるかのような空間を提案した。
常日頃からソフトやハードについて、その新しさとはなんなのかという事を考えているがここでは誰もが知っている本という存在と、誰もが知っているベットという存在、そのふたつが出会うことで、誰もがしっている新しい風景が生まれた。本を持って、本棚の中という個室に入っていくシーンや、本棚の奥に誰かが住んでいるかのようなシーン、そのどれもが日常の行動の延長線にある新しい風景として浮かび上がった。
新しさ、それは知らないことではなく知っていることなのかもしれない。なかったものが、あるになる瞬間。そんな場面に少しでも多く立ち会うための思考について、興味を持ち続けている。