原点を探り、ブランドの空気感を纏うこと
オンラインストアが普及し実店舗の意義が問われるなか「大型店舗を持つファッションブランドのストアデザインはどうあるべきか」ブランディングの視点から掘り下げ、場を持つ意味を考えるところから取り組みたい。これが私たちからGapさんへの最初の提案だった。Gapの歴史や思想から紡ぎ出される本質の部分を表現するために「原点に立ち戻る・要素を抽出する・再構築する」これらの3つのプロセスを通してショップの在り方を考えていくことにした。
Gapの原点を探るなか、1969年創業の地カルフォルニアでデニムとレコードのお店から始まりアメリカンカジュアルというスタイルが確立されていったブランドの歴史、そこからリペアやカスタマイズの精神やローカリティーなどの要素が抽出されていった。
それらの個性をカスタマーに感じてもらえるショップにするために、コーヒーやドーナツなどのフードに加え、レコードの販売、刺繍やワッペンなどで商品のカスタマイズやワークショップが行える機能を内包した 「Gap の世界観が凝縮したGap CAFE」という小屋(シェッド)を建築し、カフェがエントランスとなるようなお店の在り方を提案した。
ブランドのアイデンティティーを担うデニムを象徴するインディコ染めを日本の技術に置き換え空間自体を藍染で染めて仕上げたカフェ。そのカフェの存在自体を風景と捉えて計画した物販エリアや、自然光が降り注ぐような心地良さをつくる照明計画などによって"説明的でなく感覚的に"カルフォルニアの空気感をまとうGapの世界観を体験として知って貰う場となるように全体を計画し、会話などの日常の情報を介し多様な文化が発酵してゆく場である「カフェ」の要素と「売り場」を融合させていった。
ここでは商品の置かれる背景として、ブランドの魅力を掘り起こし体験として伝える為のカフェという付加価値をつけることで、商品に出会うきっかけを作り、お店での滞在時間や滞在の目的を多様化させている。それにより洋服という商品にストーリーや愛着を生み出し、購入という目的以外の新たな価値と体験を提供する場としてショップが機能するのではないかと期待している。