都市の中の森
L+(エルプラス)は分譲マンションの販売等の事業を展開する不動産会社が運営する小さな複合施設。ロードサイド型の飲食店として利用されていた建築を改修し “RE THINK LIFE”をテーマに、カフェ・体験シアター・モデルルームを内包する「心地のよい暮らし」を提案する場が求められた。
中高層の建築が建ち並ぶ周辺環境において、大きな道路が交わるこの交差点に面した計画地だけは視界や風の抜けを感じる“ぽっかり”と開かれた場所であった。その印象から浮かんだのがここに “都市のなかの森をつくる”という発想だった。三角形の敷地の余白、ボリュームが連なるような建物形状からも植物を立体的に計画するに適した環境であったこと。また事業主が企画・販売するマンションが数多く点在するエリアであることから、街に緑豊かな環境を提供すること(森をつくること)で地域に貢献し、同時にこれからの暮らしを提供する企業としての姿勢を場をもって伝えることが出来るのではないかと考えた。
敷地を森として育てていくという概念を軸に、カフェの設計で提案したのが “寄り道=みちくさ”したくなるような道。具体的には、駐車場利用されていた1階部分を室内化し街に開かれたカフェ兼ショップとして計画。新規の外壁ラインは既存建築の2階外壁面からセットバックさせることで軒下空間をつくりカフェエントランスへのアクセスとして敷地と隣り合う二つの道路をつなぐ敷地内を横断する(森の中の小径のような)新たな道を設計した。ファサードは全開口できるサッシと、主に土・木・麻などの自然素材を用いた連続性で中と外を繋がりをつくった。内部空間では本棚でありベンチにもなる段差を利用した階段の作り方により、モノと空間、用途毎の領域を溶かしあらゆる要素が緩やかにつながるように計画。豊かな暮らしを身近なものから体感、発見できるよう食やモノやアートや本など多様な要素を空間に介在させそれらのディレクションまでを手掛けている。
ここでは施設の設計だけでなく“敷地の在り方”をデザインすることで、街に小さな緑の森が構成されていく環境を目指した。また、街におけるカフェの存在を考えるなかで、少し先の未来に目線をおき時間の経過とともに生まれる街と暮らしの良い関係を思考した。