オフィスをリビングとして設計する
従来のオフィス空間は圧倒的な数のオフィス家具によって構築されると言っても過言ではない。もし全てのデスクの天板が木に変わったら、そこにはオフィスではない新しい風景が生まれるのではないだろうか。そんな小さな気づきからこのプロジェクトは始まった。
「日本一働き易いオフィスを」というLINEからのリクエストに対して、敢えて仲間との団欒や寛ぎについて考え「リビング」という概念をオフィスに持ち込むことを試みた。
単にそれらしい家具や設えだけでリビングを作るのではなく、トイレに行くだけのはずが人と顔を合わし会話が生まれ、外出から帰り自席に戻る前にコーヒーを飲みながら寛ぐといった、体験や行為によってリビングという概念を顕在化させるため、執務階コア側の主要動線上にWORK LOUNGEやCOMMUNICATION LOUNGEといった自然と人が集う場所を用意した。偶然居合わせた仲間とゆったりとしたソファで打ち合わせをする、寝転がりながらスマホでメールを返すといった、まるで家のリビングで起きるような出来事が展開される。
また、2000席以上ある執務デスクをはじめ、会議室やカフェのテーブルは全て素材や形に拘り特注で製作し、スーツ姿の大人がダイニングチェアに座りダイニングテーブルの上で真剣に打ち合わせをするといった良い違和感のある新しいオフィスの風景が生まれた。
働き易さについて考えるために、休む時間や対話の時間について考える。かつての職住一体のような働く場所と休む場所が同居し様々な出来事の混在によって化学反応を起こす環境が、新しい何かをつくり出すためには必要ではないだろうか。机に向かって考えていても思いつかなかったアイデアが、休憩中のふとしたときに閃くといった、思いがけない出来事がこのオフィスで数多く起きることを我々は願っている。