人工でありながら自然であること
DIESELの期間限定のインスタレーションのプロジェクト。通常のインスタレーションのように作品を展示するものとは違い、インスタレーション作品として成立することと、アパレルのショップとしての営業も同時にできる状態が求められた。
DIESELの代表的なアイテムであるジーンズの時代的価値に我々は興味を持ち、そこから空間のアイデアを導き出した。本来作業着として使用されていたジーンズが、ある時、ファッションの代表的アイテムへと価値観が変わったように、普段目にも留めないような工事用配管が「Nature Factory」と名付けられ、全く違う表情をここでは見せる。壁を這うように設置された無数のパイプは、従来の設備配管の姿から、上部に向かうにつれマングローブの森のように縦横無尽に駆け巡り、空間全体を覆い尽くす。
それはまさに長い時間をかけて成長した自然物のようでもある。人工的行為によってつくり出された工事用の配管に覆われたこの空間は、あたかも自然が生み出す木陰のような表情をつくり出す。自然と人工が同居した、新しい化学反応がこの場所で起きている。
樹木の間から差し込む光の影が什器に投影され、商品が木々の中に佇み、インスタレーションとショップとしての機能も同居し始める。ここでは配管とファッションという一見違うものの中にも、共通する価値観や、ジャンルを横断する多様性が存在するということを、このインスタレーションを通して伝えようとした。
ギャラリーを、ディスプレイも兼ねたショップ空間とするインスタレーションである。約6ヶ月間の展示であった。規格化された設備配管用の塩ビパイプを使用。通常、水平・垂直につないでいくものを自由な角度でつないでいくことで、まるで枝が伸びるかのように、自在に空間を駆け巡る。