道を通し滞在時間に沿った場とする
サイクリストにとって180kmの霞ケ浦りんりんロードの旅に出かける拠点となり、地域住民にとっては日常における出発、到着のハブとなるこの施設のデザインに際し、我々は施設全体に街とつながる新たな道を挿入することを軸に、その道を場として捉えて施設内の各機能や滞在時間からそれぞれのフロアごとに出発到着の場にふさわしい共有環境デザインを計画した。
3F:TERMINAL 土浦駅の入口/顔の場
駅コンコースが直結し、サイクリングホテルのエントランス部も設けられる3Fフロアは街の顔であり、多くの人の流れを誘導する場として、エキスパンドメタルと照明による奥行きラインを強調した動きのあるデザインで高揚感と躍動感を表現した。
2F:LOBY 出発到着後の場
フードコート、カフェが並ぶ2Fフロアは滞留時間が長く、土浦駅出発、到着後のくつろぎを愉しむ場となるよう、施設利用者にとっては各エリアをつなぐ道、また駅利用者にとっての毎日の道となることから単なる通路とならないよう回遊性による引き込みを意識した道を設計した。
1F:PIT 出発準備の場
サイクリングステーションやコンビニ、ドラッグストアなどが連なるファサードは、滞留時間も短く出発に向けた一時的な準備をする場に見合ったデザインとしてピットをモチーフに数字や柱の連続性の表現で街と施設をシームレスにつなぐ寄り道の出来る止まり木のような場所とした。サイクルステーションと共有部間に余白を設け輪行の自転車の組み立てやメンテナンスの場としての活用を提案し出発準備の場に見合う新たな機能と風景をつくりをしている。
施設全体に自転車道路を示す床のブルーラインや道路標識をモチーフとして用い施設内を一気通貫する道をデザインし、各階においてはそれぞれのエリアが持つべき使われ方をTERMINAL・LOBY・PITという名前を付けそこからイメージする要素で空間を構築した。
街の特徴である豊かな自然やサイクリングロードのモチーフを抽象化した外観のデザインも含め、この街や駅がどんな場所でどんな楽しみ方が出来るのか。場に名前を付けることやアイコン化することで、文字情報ではなく絵で場を示すピクトグラムのようにそれぞれの場の特徴や使われ方を空間デザインにより可視化することを試みた。