小さな車庫から大きな価値を生み出す
住宅の車庫内に、入れ子状に建つ店舗である。店名の「SIaCO(シァコ)」は車庫に由来していることから、車庫らしさを失わない計画とすることが求められた。そのため、住宅自体に手を加えて車庫を室内化してしまうのではなく、「車庫に店が駐車されている」イメージを元に設計を進めた。
木のフレームとポリカーボネートで構成された直方体の店は、明るさや親しみやすさを感じさせるとともに、コスト的・構法的にも再現性の高いものとなっている。
また、地域に開かれた店となるよう、内外の繋がりが感じられる意匠としている。例えば、正面のしとみ戸が開かれると、日射や雨を遮りながら人の居場所をつくる庇となり、大きな開口部へと人々を招き入れる。また、閉店時にしとみ戸を閉めると、ポリカーボネートを通して店全体がやわらかく発光し、灯りのように街を照らす。
これらを始めとするいくつかの工夫を施すことにより、最小限の面積、手数、マテリアルで構成されているにも関わらず、店の良さをダイレクトに地域に波及する空間とすることを目指した。
さらに、車を買う感覚で出店するようなリアリティを提示できたことで、様々な障壁を伴う開業の敷居を低くするようなモデルとなることを願っている。