人の拠り所
計画地は、駿河湾に面した海を望む場所である。海に面した絶好のロケーションであるにもかかわらず、この地域は人通りは少なく閑散としていた。この地域を知る人たちは、海に対する塩害や津波、台風などネガティブな要素を連想することが多い。そんなイメージを一新させるべく、クライアントはここに衣・食・住をトータルして提案する商業施設をつくることを計画した。ネガティブだった海に足を運んでもらえるような魅力をこの場所に求められた。
建築構成
人のもつ原初的な行為を補完するように建築をつくることで、人が自然と拠り所にするような場所となるのではないだろうか。雨風や日射をしのぐ深い軒を海に沿って設け、その下に人が腰かけることのできるデッキや階段を計画した。また、パブリックスペースというバッファゾーンを軒下と、店舗の間に設けることで室内環境を安定させると同時に、あらゆる行為のあふれだす場所を設けた。
空間の質
ファッションや食は、価格や見栄え、味付けなど手を多く加えることで魅力を出すことが多い。しかし、最終的には生地や食材そのものの素材の良さを引き出すことで価値観や魅力を得ることにたどり着く。それと同様に、建築では質感や素材感を消した仕上げをして均質になるように手を加えたものが多いが、ここでは徹底的に素地の材料を扱い、割付や素材のもつ質感にこだわることで、空間のもつ本来の魅力や豊かさを引き出した。すでに素材が持っている色を活かすことが、結果として商品を活かす場所となった。