小さな操作による大きな役割
広島市南区にある店舗の計画である。
敷地は南に猿候川越しに海田大橋を望むことの出来る恵まれたロケーションにある。クライアントはこの豊かな環境を最大限に楽しむための場としてカフェスペース・展望浴場を望まれていた。
周囲の環境を楽しむための場の最適解として我々は建築の主張を可能な限り押さえその場に器を作る事のみに撤することで単なる器としてのニュートラルな空間を生み出す事で周辺の自然環境と強く結びつけることが出来るのではないかと考えた。
構成として東西に14メートル、奥行き3.5メートル~7.6メートルと言う変形台形敷地両端にコンクリート自立壁を配し、架橋のごとく鉄骨を掛け渡す事で、13メートルのスパンをとばし1階を無柱空間とし、狭い前面道路での駐車困難な状況を回避しする構造体とした。最上階は道路斜線によって導かれた形態をそのままフレーミングする事で将来の日よけの設置を可能にしている。
また外壁は一般的に流通しているポリカーボネートの波板で透光性のある断熱材を挟み込んだ外壁にすることで断熱と採光の相反する問題を解決する事とした。これは建築の作られ方を土木的な観点から作ることで可能になったフレームや、断熱や採光と言った建築行為に必ず向き合うべき問題を、ささやかな視点を変えることで解決出来る可能性を模索したプロジェクトである。
今後の設計者のあり方として現代の恵まれた建築技術を持て余すことなく、柔らかな視点を持つことで解決できる、小さな操作による大きな役割を、大切に設計を続けたいと考えている。