くるりの森

森の概念を持つ建築

登ると遊具になり
腰をかけると家具として
遠くから鑑賞するとアートになる
人の行為によって
意味が多様化する建築である

森の概念を持つ建築

幼い頃、川や山で遊んでいた時には、その場所にある石や木、落ちている枝やモノを使って基地をつくったり、魚屋さんで発砲スチロールを大量にもらい船のような浮くモノをつくった経験がある。考えてみると、それらの使い道が分からないモノたちは、基地や船になるために存在していたわけではないが、私たちのものづくりの好奇心をかき立ててくれた存在には違いなかった。意味を持たないものだったからこそ、意味を見つけることができたのだと、今は思う。

くるりの森は、そんな幼い頃の経験が元になって実現したプロジェクトである。静岡県浜松市にあるニコエという商業施設の一角に敷地はあり、大人も子どもも楽しむことができるランドスケープをつくってほしいという要望を受け、私たちは「森」をつくることを提案した。森といっても、たくさんの木を植えてつくる森ではなく、建築という森である。

木々にネットをかけて、そこを登ると遊具になり、腰をかけると家具として、遠くから鑑賞するとアートになるような、人の行為によって意味が多様化する建築を、ここでは「森」と呼んでいる。複雑に見えて秩序が存在する自然界の森と同様に、ある一定の秩序によってこの建築は成り立っている。

r=3,000mmで加工されたひとつのパーツの角度を変え、ジョイントしていくことで、複雑さの中にある多様な形を可能にし、円滑な施工性を担保している。計画は今後、隣の敷地へと拡張され、建築という木々の上にカフェや図書館が建築されていく。自然のように日々変化していく移ろいという概念を建築が手に入れたことによって、自然と同様にこの建築は環境と共に成長し続け、人々に愛される存在になるであろう。

人との関わりによって、この建築は意味を授かる。それは昔、使い道の分からなかったモノたちに意味を見つけた時と同様の感動をもたらしてくれる。無意味という意味、それは意味のなかった星が線で結ばれて星座という意味を持つように、一見意味がないように見えるものであっても、そこには無限の可能性が存在しているのである。意味のある建築をつくりたいからこそ、その傍にある、まだ意味を持たないモノにも同様に好奇心を持つ子どもの頃のような純粋な視野を持ち続けたい。プロジェクトを通し、そんなことを改めて強く思った。

  • 01

    02

01

浜松で愛されてきた和洋菓子「うなぎパイ」で有名な菓子ブランドが新設したコミュニティ施設内にある。レストランやカフェが軒を連ね、様々なクリエイターがそれぞれの空間をデザインしている。くるりの森は大人も子どもも遊べるようになっていて、パイプに腰をかければ椅子に、ネットに転ぶとハンモックのようにもなる。周囲に高い建物が少ないことから目印のような存在で、夜はライトアップされ、モニュメントのように浮かび上がる。

02

同じ形のパーツを用意し、ジョイントの角度だけ自由にしてつないでいく。シンプルなパーツと構成から複雑で多様な形をつくった。

data

竣工

2014年9月

所在地

静岡県浜松市

用途

遊具

構造

鋼構造

階数

-

施工期間

2014.04-2014.07

敷地面積

17290.2㎡

建築面積

286.72㎡

延床面積

249.59㎡

credit

施工

岡部

構造設計

東京芸術大学金田研究室

写真

矢野 紀行

担当者

谷尻 誠

吉田 愛

西永 竜也

media

新建築 2014年10月号

bob 2015年7月