自然のすきまを建築する
これは自然と建築の関係について考えた住宅です。
敷地は、山と山に挟まれた谷状の場所に広がる田畑の中に位置します。一見どこまでが敷地で、どこからが隣の敷地なのか見分けのつきにくい場所に対して、壁のような細長いボリュームを可能な限り敷地いっぱいに建てることを考えました。するとたちまち壁のような建築の両側には、性格の違った自然が敷地をとび越えて存在し始めます。壁より道路側には少しパブリックな自然ができ、反対に壁より山側には少しプライベートな自然が出来ることになります。大きな自然の中に壁のような建築を建てることで、ゆるやかに自然を分ける操作です。
壁のような建築は、それまで存在し得なかった自然に境界を生み出し、その境界に自然と自然のすきまを存在させます。性格の異なる二つの自然を生み出す壁のような建築の内部空間は、まるで自然のすきまに住んでいるような感覚を持つ場所となり、外部との関係がほんの少し近づいた住空間となります。
建築により自然がゆるやかに定義され、自然によりすきまという形で建築が定義されます。それは、まわりに大きな自然が広がるこの敷地だからこそ築き得る自然と建築の関係性ではないかと考えます。