広島の小屋

風景の中に生活が溶け込む家

丘の上に薄い屋根がふわっと浮き
人がいる場所に影をつくるような建物

丘の上に家具や生活品がぱらぱらと置かれ
周囲の動物たちの間に
日常の生活が入りこむ
そんな混じりあう風景を提案した

風景の中に生活が溶け込む家

のどかな田園風景が広がる敷地に、周囲にいる動物も通り抜けてしまうような透明な建物を依頼された。敷地の中に小さな丘をつくり、その丘の上に家具や生活品がぱらぱらと置かれ、 周囲の動物たちの間に日常の生活が入りこんで混ざり合うような風景を提案した。丘の上に薄い屋根がふわっと浮いて、人がいる場所に影をつくるような建物をつくった。

外周部はすべて透明なアクリルで囲い、内部での生活が外部の環境に近づくよう計画した。アクリルは、ペアガラスと同等の高い断熱性能を持っており、半地下に埋まった温度が変わらない基礎の温度をそのまま家の内に残す。内部は透明度の高いエキスパンドメタルで緩やかに囲うことで、透明性を保ちながら綺麗にものが置かれていくきっかけになるのではないかと考えた。人工的で直線的なものではなく、なるべく自然に近い、やわらかいもので覆うだけで領域を囲うような建物とした。

生活の雑多な部分は、基礎部分に段差をつくり、低いゾーンに収納をつくることで解決した。基礎部分に手すりの必要がないよう、最大で1000mmとし、中に入ると外には空だけが見えるような位置とすることでプライバシーを確保するとともに、キッチン等はその天板が外の地面と続いていって、例えば鹿がつくっているものを覗き込んでしまうような風景ができていく。アクリルの開口部の高さと同程度に庇を出すことで、内部の温熱環境を整えながら、外部では日よけになり、その場で過ごすきっかけとなる。内部だけでなく外部も一体となる、風景の中に生活が溶け込む建物となった。

今までは窓は窓、壁は壁として別々のものをつなぎ合わせるようにつくられてきたがテクノロジーが進化し、窓であり壁であり柱でもあるという在り方も可能になってきている。現代は共存の時代。建築はもっと自由になれる。

data

竣工

2014年07月

所在地

広島県安芸高田市

用途

住宅

構造

S造

階数

地上1階建

設計期間

2011.10-2013.05

施工期間

2013.05-2014.07

敷地面積

490㎡

建築面積

100㎡

延床面積

81.00㎡

credit

施工

アルフ

構造設計

東京芸術大学金田研究室

写真

矢野 紀行

担当者

谷尻 誠

吉田 愛

安田 智紀

media

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