太田の家

まちと自然の間

環境に対し開くと閉じるを使い分け
内と外、風と光との関係に強弱をつける
人工的にそびえる建築群と雄大に伸びる木々
対極にある二つの風景との共存めざす

まちと自然の間

敷地は関東平野を望む斜面地の最上段である。眼下に広がる都市の風景と、背後の山に挟まれる場所に夫婦と母親が暮らす2世帯住宅を考えた。大きく景色を切り取ったワンルーム空間にしたくなるような環境であるが、住まいにそれぞれの用途を持った居場所が存在するように、その居場所にもまた、それぞれにあう景色が存在する計画とした。平面計画では、日本庭園に用いられる『閉ざして開く景観展開』を建物に落とし込み、景色と居場所を完全に分断しないことに配慮しつつ、5つのボリュームが連なる形状とし、場所にあわせた厚みのある壁によって空間が緩やかに仕切られている。
三角形の鋭角に尖る壁によって風景に奥行きを持たせ、室内に光のグラデーションをつくる。かたや逆方向からは厚みのある壁が適度に風景を遮り風景を切り取る。屋根の勾配は、敷地の眼下にあるまちと、敷地から見上げる山に対して片流れとし、壁と共に風景を絞り、南側からの強い日射を抑え、北側からの安定した光を室内に取り込んでいる。また、高さを抑えたエントランスと水周りのボリュームを、高いボリュームの寝室とLDKの間に差し込むことで、高さ方向でも閉ざして開くという感覚が、風景の移り変わりを生み出している。
近隣との距離を保つことが難しい国土の狭い日本において、壁や屋根は外的環境から住まい手を守り隠す重要な要素となるが、この住まいの壁や屋根は、人工的な風景であるまちと大自然の間で、住まい手に新たな環境との共存を促す柔らかな隙間を作っている。

data

竣工

2021年06月

所在地

群馬県太田市

用途

住宅

構造

S造

階数

1階 平屋

設計期間

2016.11-2019.11

施工期間

2019.12-2021.06

敷地面積

965.75㎡

建築面積

218.42㎡

延床面積

203.05㎡

credit

施工

新建築工房

構造設計

テクトニカ

家具ディレクション

ギャラリー カサデ

植栽

山梅

写真

矢野 紀行

担当者

谷尻 誠

吉田 愛

木村 太地

media

GA HOUSES vol.184