外を考えること
涼しい風が通り抜ける気持ちのよい外部空間での食事、温泉の露天風呂で開放感溢れる外部での入浴の時間、ハンモックに揺られながら雲の流れをぼんやり見つめ、気がつくと眠りに誘われていた安らかな外部での睡眠。外部での体験は、我々に時間を過ごすということの豊かさを与えてくれる。
敷地は安城市の住宅地にあり、両親の住む隣の敷地に若い家族の住まいをつくる計画である。庭で運動をすること、こどもを自由に外で遊ばせることなどクライアントからは内部はもちろんのこと、
外部での生活の楽しさを提案することが求められた。
外を考える事。生活という全般が内部を中心に行われているとしたならば、この豊かさを設計という行為によって日々の生活でも実現することができないかと我々は考えた。計画は敷地全体に大きな屋根を掛け、外部のLDKと内部のLDKを等価に作り出している。囲まれた庭は、従来の鑑賞するための場所ではなく部屋として使われ始め、外部にキッチンを置くことによって、外部での食事が日常となり、外部で音楽を聴いたり、くつろいだり、本を読んだり、眠りについたり、能動的に庭が部屋として使われる。敷地全体を住宅として機能させ、生活が内外を横断しながら営まれること、それは建築の可能性を拡張することでもあるのではないだろうか。
個人の住宅を設計するということで、建築の豊かさが拡張され、外部ということを改めて考えることは住宅のみならずあらゆる建築を設計する上でも向きあうべきことで、内外を考えることの先に、世の中の建築が豊かになるとしたならば、住宅は社会性を持つともいえるのではないだろうか。プライベートな空間を考えることと、パブリックを考えることが今までは二つのものとして定義されてきたが、我々は、その間の可能性をこれからも模索していきたいと考えている。