スケールについて考えること
設計するという人工的行為で、限りなく自然に近い建築をつくりたいと、日々考えている。自然の、計り知れない大きさとスケールで定義されている建築を考えた時、その計り知れない大きさの設計をすることで、建築が自然に近づくのではないだろうかと考えた。
空や海、山のような、大きいということをいわずとも理解している状態、つまりスケール境界がぼんやりとした、ただ大きい、という状態を設計すること。
敷地は、常滑市の宅地開発された住宅地の3方向を道路に囲まれた土地で、昔からある自然の気配をわずかながら感じることができる場所である。
そのわずかな自然環境との関わりを頼りに、敷地に壁を5枚配することで、空間を閉じながら開いていく。内外や部屋同士は壁によって分節されながら、大きな開口によってつながり、ひとつの場所に分節と連続が同居し始める。向こう側と、またその向こうの空間が、今いる場所からあらゆる方向へと距離をつくり、どこまでも続いていくような錯覚に陥る。その「どこまでも」という感覚を設計することで、さらに向こう側の空間を想像し始める状態が生まれた。そして、自然に対して感じたのと同様の「スケールが解らない」という大きさが存在し始める。
建築というスケールについて考えること、その先に自然というスケール、つまりは大きさについて考えることが、建築と自然を等価に考えるひとつの解答だとしたならば、その可能性を我々は探求していきたいと考えている。