広島の家

始まりから考えること

ものが材料になる瞬間について考えることは
空間に機能が与えられる瞬間と同じように
始まりを考えることでも
あるのではないだろうか

ものをつくるために始まりから考えること
それがこれからの建築の可能性を開いていく
ことにつながるのではないかと考えた

始まりから考えること

「材料」とは、あるものをつくる時、もととして用いるもの。と、辞書には書かれている。ものが材料になる瞬間について考えることは、空間に機能が与えられる瞬間と同じように、始まりを考えることでもあるのではないだろうか。

先人たちは、ものをつくるために、何を用い、どのような工法でつくるべきなのかということをあらゆる側面から考え、始まりからつくっていたことが想像できる。現代に生きる私たちは、その場に最適な材料を用意されている中から選択するという状況で、建築をつくることに慣れてしまっているのかも知れない。ものをつくるために始まりから考えること、それが、これからの建築の可能性を開いていくことにつながるのではないだろうか。

広島の家は、築43年のマンションの一室、自宅リノベーションの計画である。常日頃から考えている、新しさ、未完成という完成、歴史と未来などをテーマに空間について考えた。

既存で計画された和室を残しながら周囲を解体し、建築を過去へと戻していく行為と、新しく設計した部分とで新旧の関係性をつくった。新しく足される部分は可能な限りスチールを用いた。スチールは木と同様に、内装材、家具、サッシ、照明、花壇や小物に至るまで、あらゆる材料になることができる素材である。鉄の持つ、黒皮の自然な素材感と、和室や躯体とのコントラストを設計することで、互いを顕在化させながら空間ができ上がることを意図した。

手入れをしないと変化していく鉄と長く付き合っていくこと、それは先人が手入れをしながら建築を次世代へと引き継いだように、その空間への愛着の原点となる。

メンテナンスフリーが求められがちな社会背景もあるが、手を入れることによって、その空間への思いを馳せること、それが空間を使うということなのかもしれない。少しずつ手を入れながら、変化を楽しむための家。手が掛かる子どもほどかわいいと昔からいわれているが、そうやってこの空間と時間を共に過ごしたいと考えている。

  • Details

data

竣工

2015年12月

所在地

広島県広島市

用途

住宅

設計期間

2015.03-2015.10

施工期間

2015.10-2015.12

延床面積

118㎡

credit

施工

プロシード

カモクラフト

植栽

担当

谷尻 誠

media

新建築 2014年9月号

住宅特集 2016年11月号