賃貸の新しい可能性
この計画は敷地の未確定な段階から始まった。クライアントからは、賃貸マンションとしての新しい提案性のあるもの、敷地への柔軟性、今後起こりうるであろうメンテナンスなどを考慮したものにしたいというお話しだった。
この時、敷地が決まっていない状態で考えたことは、建物をユニット単位で考え、ユニットの配置方法によって、敷地への柔軟性を持たせ、並列・L字・コの字型のコート形式など形態の自由度を高めることと、単身者世帯のバルコニーが設備機器置場・物干しにしか利用されていない現実、あまりに暗い水回りといった今までの賃貸マンションの利用状況を改善する事であった。
建物の構成は、バルコニーと水回りを逆転させ、バッファゾーンとしての水回りと内土間としてのインナーバルコニーとすることで、自然と外部に水廻りが面した計画とし、設備配管スペースを外壁パネル内部に設け、パネルの脱着によって外部から設備のメンテナンスが可能な外観デザインとなるように考えた。このことは、仮に入居されている方がいた場合においてメンテナンスが必要になったとしても外部からケアすることができ、入居者にかかる精神的ストレスを最小限に軽減することと、同時に既存の躯体や仕上げを壊わさず、環境的、経済的な負荷がかからないようにもなっている。また内部は、専有面積を最大限利用できるよう水回りスペースとの仕切を腰高(H=1000mm)とし上部にガラスを嵌め込み、ブラインドを設けてプライバシーを確保する事で専有面積を利用者が調整出来る自由度の高い計画とした。
敷地は計画から約一年後に決定し、周囲の条件などから今回はペットケアアパートメントという付加価値のあるマンションとして計画を進める事となった。各居室においては、内土間にしたことが結果的にはペットを飼う場として非常に魅力的な空間となった。様々な要望・敷地に対して多くの賃貸マンションが計画される中、居住者や環境に対する配慮を付加価値として提案していく事がサスティナブルな建築と成り得たプロジェクトである。