あいまいな領域
東京の下町を歩いた時に、個人住宅の植物を入れた植木鉢が何列も路地に置かれ、あたかもその路地が住宅の敷地の一部であるかのような風景に出会った。それからパブリックとプライベート、あいまいな領域について考えるようになった。あの風景のような成り立ちを商業に持ち込みたいと考えた。
通常、道は人が通行する場所だが、社交場でもあり、そこに屋台を出せば店にもなる。道なのか、空間なのか、それらが混ざり合う環境を設計することで、商業施設自体を活性化させていくような空間ができないだろうか。
ショッピングモールなど、通常の商業施設は通路と店舗のスペースが分かれているものだ。しかしその境界を曖昧にし、店の軒を出すことで、お客さんは通路を歩いていながら、知らず知らずのうちに、お店に入っていく。本があると人が集まってくる。カフェがあると人が滞在する。遊び場を併設することで、人を休ませる場所にもなり、その結果滞在率が高くなり、消費につながる。
徹底的にローコストのインテリアとした。床は剥がしたまま、家具も合板を使い、本の物流の場所、倉庫がそのままお店になっているかのような動きのある空間をつくった。
書店を軸に、本や音楽、映画などを扱う蔦屋書店の新業態で、名古屋にオープンした1号店である。書店とカフェを融合させ、地方のショッピングモールを中心に展開する。書店では新刊本だけでなく、中古本、CD/DVDのレンタル・販売、文具、雑貨などを扱う。店内にスターバックスコーヒーがあり、飲食しながら購入していない本も席で読むことができる。同フロア内には飲食店やドラッグストアなどがある。