洗練された生活感
これまで継続して設計を行ってきたブランドの展開店舗である。従来の世界観を踏襲しつつ、やわらかさを感じる「生活感」を加えたいというのがクライアントの要望だった。
着想の起点としたのは、パリの食料品売り場の風景である。多様な商品が所狭しと並ぶ生活のにぎわいと、上品な佇まいが同居する風景を、空間へ落とし込むことを試みた。
ステンレスやタイルなど、キッチンを想起させる素材を基調とし、親しみやすさと日常性を表現している。一方で、棚や天板は鈍い艶をまとったステンレスで端正なプロポーションとし、基壇は色味と光沢を調整したタイルを細い目地で納めるなど、什器の納まりは上品さを損なわないための調整を重ねた。背景色は落ち着きを持たせたニュートラルなグレーとし、多様な製品を引き立てている。
区画の特徴である大きな柱は、レジやギフトオペレーション、壁面棚を回り込ませる構成とし、上部に屋根をかけることで場の重心を定めた。キッチンの作業場を想起させる中心的な存在として扱いながら、回遊性をもたせ、視線と動線を自然に奥まで導く。
洗練と親しみやすさ、上品さとにぎわいといった一見相反する要素を重ね合わせ、雑多さへ回収されない「洗練された生活感」を目指した。