洗練された都市のなかのリビング
10年ほど前に立ち寄ったウィリアムズバーグのブルーボトルコーヒーでは、ローカルに溶け込むお店の雰囲気や個性的でフレンドリーなバリスタの姿がとても印象的でした。「一杯ずつ時間をかけて丁寧に煎れるコーヒー」へのこだわりは、ただ単に技術的なことだけではなくゆったりとした時間を楽しむというライフスタイルの提案でもあることを知り、一杯のコーヒーに込めているブルーボトルの想いを感じた体験でした。
この代官山のカフェでは、地域、文化、地形といったこの街ならではのコンテクストを取り入れたライフスタイル(時間の過ごし方)の体現、ソファー席でゆったり過ごす日本の昔ながらの喫茶店のような居心地をブルーボトルコーヒーらしい解釈で変換する。この2点をデザインのテーマとしました。レジデンス、オフィス、店舗が融合する建築のオープンエアな施設共用部から店内に道を引き込み回遊性を持たせたプランでは、バリスタがコーヒーを煎れる所作が主役になるよう中央にドリンクカウンターを配置。また高低差や坂の多い代官山の地形の特性をなぞるように、段丘状の地形と緑豊かな自然環境を取り込んだレベル差による空間体験をつくり公園のような大らかな場、自宅のソファーで寛ぐようなプライベートな場という異なる居場所が緩やかに繋がり共存するように空間を構成していきました。マテリアルには日々大量に出るコーヒー粉を顔料とした左官仕上げや自然素材を用い、コーヒーを飲むという日常の中にサスティナブルな循環を介在させることでウェルネスで魅力的な暮らしに内包される様々なシーンが融合する“洗練された都市のなかのリビング”として機能する場を目指しました。