建築とランドスケープの一体感
一見、悪条件な敷地には、建築を導く上での大きな手がかりが潜んでいるのではないかと日々、考えている。
カフェ・ラ・ミールは愛媛県新居浜市中心部のカフェの計画である。現地を訪れて驚いたのは地方独特のカフェの利用状況である。年齢層も幅広く、夜10時をまわっても情報交換の場として地域住民が集まり、カフェの文化が根付いている様子が印象的であった。クライアントは、駐車台数の確保や、店舗内部に様々な性格の場所が欲しいといった理由などから、2階建ての店舗であること、また何よりも地域におけるランドマークとなる建物を希望していた。計画にあたり愛媛県内の店舗を見て回ったが、2階建ての店舗の多くはスタッフの作業性を考慮して、来客を1階に誘導するため2階スペースは1階が満席にならない限りは機能していないように見えた。そこで私たちは、敷地が道路よりも1.0M低い現状を活かし、2階建ての店舗ではなく、現況地盤と盛土地盤に2枚の床レベルを持つ半地下と1階という多様な場と、スタッフの導線にも対応可能な建築を提案した。
建物は、敷地整備によってでき上がった2枚の床レベルに沿うように梁をリズミカルに配置することだけで構成されており構造的に無理のないスパンごとに鉄骨柱・コンクリート柱で梁を受け、構造と空間の分節に相互に働く計画としている。外観は梁間スラブにぐり石を敷き込み、建築とランドスケープが一体となった外観とし、自然材料の力強さを備えた印象的なカタチとすることで、幅広い客層に親しまれる建築になることを意図している。また、コンクリート型枠は飲食店という場所の特性にあわせ、新旧の普通型枠を90ミリ幅に割ったものをパネル化することで、冷たく固いコンクリートの印象を親しみのもてる質感へと変化させている。
この計画では、建築における悪条件な敷地と建物の関係・柱と梁という関係を丁寧に整理することで、単純でありながらも多様な、商空間という場所にふさわしい建築になったのではないかと思う。オープン後、三角カフェというニックネームで地域に親しまれており、観光地化しているという。素材やカタチの強さが、今後も更に地域に浸透していくことを願っている。