対比・混沌・違和感
Kolorというブランドを考察すると、素材、パターン、加工、色など、洋服を構成する様々な要素において、はっとさせられるような“良い違和感”が感じられる。ショップのデザインに際し、その “良い違和感”という感覚を幾つかの“対比”を用いてブランドの魅力として空間的に表現したいと考えた。
出店エリアがハイブランドに挟まれているという立地条件から、両サイドの店舗やフロア全体は高級感のある素材で仕上がってくることが想定された。その環境に対する圧倒的な違和感として、仕上げを施す前の工事現場のように未完成な設えとして残すこととした。
通常は仕上げ材で覆って見えなくなる軽量鉄骨の下地材や配管や配線、耐火被覆された鉄骨柱などはすべて現しとし、さらに必要のない大量の配線をフェイクとして追加。色鉛筆の種類ほどある色とりどりのカラフルな配線はKolorの洋服の特徴でもある差し色との親和性を意識し、これらフェイクの存在もチャーミングな空間のアクセントになるよう意図した。
マテリアルの大半は工業製品的なチープな素材でシャープなディテールを目指し、一部にラグジュアリーな印象のカーペットやオブジェのような真鍮素材の什器を加えた。この様にさまざまな要素を対比という関係のもとデザインに落とし込むことで、ブランドの魅力にも通じる“良い違和感”と心地よい裏切りのある空間を目指した。