グラデーショナルな色彩の重なり
ジュエリーの源流にある鉱物は自然界のなかで時をかけて生成され無数の元素の掛け合わせから結晶体として美しい物質へと変化し形つくられている。そこに含まれる “偶発性”や“時間”という不確かで儚いものに感じる美しさをLamieのジュエリーにおける根源的な魅力とし“移ろい”という曖昧な要素を「白でもなく黒でもない。白と黒の間に無限にある多様なグレー」という概念を用いて空間に引用しようと考えた。
全体は質感や素材の異なるグレーで構成。エントランスや庭を切り取る開口部、ショーケースやテーブルなどのガラスには濃度の異なるグレーのフィルムを施し、グラデーショナルな色彩の重なりで空間の輪郭をぼかす。光と影や光沢や反射の効果、視点の変化によって移ろいを表現した。また中目黒川沿いの路面という立地を活かし、カフェやバーとしても気軽に立ち寄れるジュエリーショップとする為に簡易な飲食機能も加えた。中心に据えたロングカウンターは、接客やレジ機能だけでなく同時にカフェの席に、週末にはバーの立ち飲みカウンターとして機能するよう寸法を検討しひとつのカウンターで様々な行為が混じり合う状況を設計。
提供されるチャイやリキュールは、鉱物の色や印象からインスパイヤされた花やスパイスを材料としジュエリーと紐付けたレシピデザインを提案。カフェにおけるショーケースやバーにおけるリキュール瓶に見立て、それらが並ぶ風景をインテリアとして取り入れている。
ここでは“ジュエリーショップ×飲食”という異なる要素が互いに引き立てあう関係性を構築するため、設計の枠を超えブランドと空間の関係を編集する視点で「レシピと空間と商品」が一つのストーリーで繋がる空間作りを異業種のクリエーターとの協業により試みている。本来異物である色や香りや音などの感覚的な要素を混ぜることでジュエリーショップにおける新たな体験や、緊張感と気軽さのちょうど間くらいの居心地の良さを“空気感のデザイン”によって生み出そうとした。