豊かな時間をつくる
祖父のヨシヲさんが創業し、夏には家族総出でアイスクリンを作り道ゆく人たちに販売していたというアイスクリーム屋さんと、現在営業中であるコインランドリー。それらを引き継いで "アイスクリームショップ併設型コインランドリー" という新業態にリニューアルしたいという依頼を受けて現地を訪ねた。コインランドリーとして営業する倉庫は、潮風や日焼けによる建築全体の劣化、無作為に貼り付けられたサインや看板によって古びた印象が否めなかった。ここでは倉庫を最小限の改修と増築で魅力的なコンテンツへと変換させるために活かし方と残し方について考えた。
愛媛県伊予三島は製紙業が盛んな人口約3.6万人の町で敷地は駅前からほど近い神社と道路に挟まれた交差点に位置する。裏手に神社の杜を背負った間口40mほどの三角形の敷地を活かすべく使われていない手前の建築を解体して神社の豊かな緑と敷地を繋げ交差点からの視認性を確保した。既存倉庫はファサードのサッシ、外壁材を撤去して全面透明波板貼りとして既存駆体を活かし、そこに4m角のアイスクリームショップとなる建築を内外を貫通するように配置。仕上げに用いた緑のタイルは提供する食材にも通ずる瀬戸内らしさとアイコニックな存在感を表現し、穏やかな空気感と懐かしさが古い倉庫と自然に馴染み古さが魅力に感じられるよう意図して選んでいる。
「毎日が休日の朝のように“365日HOLIDAY”」というコンセプトからランドリーの作業台を卓球台に置き換えたり、ファサードや柱巻きの基礎部分をふかしてベンチとし軒下を心地のよい居場所に変えた。面倒な洗濯を楽しく、待ち時間を豊かな時間に変換し、休憩所であり社交場でもある街の縁側のような場つくりを目指した。