街と店の間につくられた新たな空間
フランス生まれのスポーツブランド「le coq sportif(ルコックスポルティフ)」の新業態が、東京・原宿にオープンした。 ブランド名に追記されている「avant (アヴァン)」とは、フランス語で「前に」を意味し、サイクルウエアをルーツの一つとする同ブランドに「疾走感」や「前衛的」という表現を加えることを意図している。
ブランドが持つスポーツカテゴリーを背景としながら、業態のコンセプト「エスプリ・フォー・アーバンライフ」を表現するため、私達は「非日常を日常化する」という考えのもと設計を始めた。また、ブランドのアイデンティティーとなっている「フランス」や「自転車」という要素を踏まえ、この店舗でファッションアイテム以外に新たに提供される物販とフードの取り扱いを、いかに街とつなげられるかについて考察した。
その回答の一つとして、ショップフロントを建物内にセットバックさせ、街と店の間に新たな空間(中と外との間である中間領域)をつくることで、店を街に開放した。この領域につくったのは、見慣れたコンビニエンスストアであり、パリの街にあるカフェのテラス席であり、コーヒースタンドであり、自転車を停める道端でもある。つまり、街にある日常的な風景である。あえて通りから後退することで、このブランドを目的に来店されるお客様以外の方とのタッチポイントを増やし、人と店の距離を近づけ、最終的にブランドとしての間口を広げることを意図した。
スポーツをもっと身近に感じ、「楽しむ」というライフスタイルを提供をする場として、社会の既視感の中にある「日常」や「普通」を再編集し、店舗デザインの領域を超え、都市生活のリデザインまで意識を拡張した設計をすることで、人の行動や生活にアクションを起こせるような空間づくりを目指した。