都市の洞穴
敷地は、南青山の表通りを背に路地を進んだ先にある旗竿地で、都市の中心にありながら雑踏から少し奥まった位置にある。建物は外部に向かって一方向に開き、薄暗い内部から外の明るさを眺める。この立地と建物がつくる「閉じすぎず、包まれる」感覚に、洞穴のような印象を受けた。ひととき都市の喧騒から離れ、施術を受け、また日常へ漕ぎ出す力を蓄える——そのような時間に寄り添う器として、「都市の洞穴」のような空間をつくりたいと考えた。
内装は、壁と什器にベージュの素材感のある左官を基調とし、天井と床は素材を変えながらもトーンを揃えることで、洞穴のような包まれ方をつくっている。床の高低差は、小上がりやベンチ、カウンター、棚へと連続し、室内に「地形」を立ち上げる。段差や塊は、領域をやわらかく分けながら、人や家具の居場所をつくり出す。また、収納や手掛けは背景に溶け込む納まりとし、視界のノイズを抑えることで、都市の情報量から解放される状態を整えた。その中に、馴染みながらも繊細な存在感をもつ家具を点在させ、ミニマムで洗練された印象を与えている。将来的に加わるクライアントの設えやヘアスタイルを引き立てる、背景としての器でもある。
一方、エントランスの階段室は、サロン内部とは色調を切り替えつつ、内外装の仕上げと調和するトーンの中から、この店の世界観に合うグリーンを選定した。街の喧騒から切り離された洞穴のような空間へ向かう、切り替えと高揚感を感じさせるアプローチとしている。