公園のようなホテル、ホテルのような公園
公民連携事業によってリニューアルした「MIYASHITA PARK(旧宮下公園)」は、地上17mの上空に公園を配しその下層に商業施設とホテルを配置した複合施設である。私達は、公園とホテルの接続部で公園とのつながりの要となる、4階ロビーラウンジカフェ・ホテルレセプションの設計を担当した。この場所は、ホテルのエントランスと、公園としてのパブリックな場という二つの要素が交差する場所であり、利用者もホテルのゲストや公園利用者、オフィスワーカー、観光客とさまざまで、イベント時に公園と一体になった利用が必要であるなど用途も多様であった。ここで求められる「誰もがどのようにも使うことができる自由な場」とは、まさに公園のようなおおらかな場なのではないかと考え、隣り合う屋上公園をそのまま引き込み公園の一部として計画することとした。
最初に決めたのはインテリアとしてではなく土木を計画するようにデザインすること。公園とのつながりを分断しないよう同素材の床を引き込み、その床をそのまま凹凸させ地形のような居場所を作り、それらの段差は現地でコンクリートを打設して仕上げた。また、カフェカウンターやレセプションカウンターなども同様の考えで、荒削りの彫刻をつくるように、必要な機能に合わせ最低限の操作とし、必然性からくる造形の美しさという視点から形を決定していった。地形のような居場所は通常の家具のように行為を限定しない。公園で木陰があればそこで休み、基壇をベンチとして腰掛け集うように、人々が自由に段差や高さ、奥行きを利用して、用途に合わせて能動的に場を使いこなしている姿が印象的だ。
このVALLEYPARKSTANDでは、本計画のため惜しまれながら伐採された欅の木をアップサイクルしたスツールを始め、敷地が持つ環境や従前の公園の記憶、歴史などのコンテクストをできるだけ継承しながら計画している。家具もアートも植物も渋谷らしい多様性と本質的な豊かさや文化を生み出すための公園の要素のひとつとなることを意図した。都市における新たなパブリックスペースとして、また自然に触れ合う身近な存在として、公園と共に育ち、愛される場になることを期待している。