千駄ヶ谷駅前公衆トイレ

関係を溶かす

コンクリートの箱を地面から少し浮かせる

重厚なコンクリートが軽々しく浮く様相は
それ自体が街のアートのようになる

浮いた隙間からは内外の様子が出入りし
お互いにその状況を伝えあう

天窓からの光は季節・時間により様子を変え
肌理の粗いコンクリートは光を現象化する

重いコンクリートが軽々しく浮き
暗い空間は光を顕在化させる

矛盾をつくることで関係性を溶かす

関係を溶かす

首都高速道路高架と地下鉄国立競技場駅の間に位置するこの建築は、オリンピック開催を機に国内外から訪れる様々な人の利用や今後の都市のインフラとしての役割を見据えた文化的な側面も併せ持つこれからのパブリックな場として、従前の「公衆トイレ」がもつ印象や機能や使い方を前提から考え直すことから計画を始めた。

平面的な広がりが期待できないなか、高さ方向に大きな気積を確保し、中央に二本の柱とトイレブースや手洗い等の機能を集約、4周の外壁は地面から縁を切り500mm浮かせる構成とした。
浮かせることで、建築内部と街に程よい繋がりと人の気配を感じる透明性が生まれ、公衆トイレの閉塞感や不安感に繋がる要因となる廊下や行き止まりという要素を取り払うことが出来た。また7.5mの高さを持つ伸びやかな立方体の建築内部の壁面は、コンクリート洗い出しの質感のある仕上げとし屋根のスリットから差し込む柔らかな光を印象的に内に引き込み、日常において意識の外にある「自然の織りなす季節や時間の移ろい」を光の変化によって意図せずとも体感として鑑賞することのできる空間となっている。

「大きな気積と浮いた壁」という特殊な条件下では柱が長くなり、細い柱は望めない。そのため柱数を少なくし大断面の柱による集約的な構造とし、屋根面の片持ち梁と共に外周の浮いた壁も壁梁として変位を均す要素として用いて「浮いた壁」を実現した。トップライトの深さも梁として利用するなど性能と環境を作る要素を同時に解くことで意匠性と構造の合理性を図っている。

アコヤ材の板張りの仕上げや真鍮のサインによるホテルのような佇まい、男女が共有できるよう中心に据えた洗面などこれまでの公衆トイレへの既視感に反する仕様は、合理性と多様性を重視して計画したものだ。誰にとってもフラットで使いやすく、かつ上質な空間をつくることで利用者の意識が変わり、快適な環境の維持に利用者自体も参加し健全に循環することを期待した提案となっている。

この建築では"重たさによる浮遊感"や"暗さによる光の存在感"など矛盾により顕在化される関係性を丁寧に積み上げて空間を構築することで、街と建築のあいだにある境界線をぼんやりと溶かし、自然と建築が共鳴しあうような魅力的な境界の在り方を模索した。建物内の余白はアートのための場所として残しており、成熟した都市における公共建築として「用をたす」という機能だけにとどまらず、街をめぐる楽しみというもう一つの意味も建築に持たせている。

data

竣工

2020年08月

所在地

東京都渋谷区

用途

公衆トイレ

設計期間

2019.11-2019.12

施工期間

2020.02-2020.08

敷地面積

75.92㎡

延床面積

75.92㎡

credit

施工

構造

オーノJAPAN

照明

Modulex

写真

長谷川健太

動画

toha

担当者

谷尻 誠

吉田 愛

岡西 雄司

media

新建築 2020年10月号

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