New Acton Nishi

未完成という完成

住居棟のファサード、インテリアの計画を
多数の建築家やアーティストと共に
計画したコンプレックスビルディング

ひとつの建物の中に、街をつくるような
そんな多様さを持つプロジェクトである

未完成という完成

2008年、日本の建築家が数人選出され、面接によって我々がプロジェクトに関わることになった。面接時、最も強く話した内容は、私たちの事務所は非常に柔軟な考えを持っており、プロジェクトごとにクライアントやエンジニア、ランドスケープアーキテクト、デザイナーなどと、化学反応を起こしながら、プロジェクトを進行しているため、アウトプットは毎回違うべきであるということであった。つまりそれは、場所や環境によって建築のあり方を問う行為であり、一見すると作家性がないかのように見えるかもしれないが、多様であるということが作家性になりうると言う事でもあるという考えを彼らに伝えた。

オーストラリア/キャンベラでのプロジェクトは集合住宅・オフィス・ホテル・飲食店などを併設させたコンプレックスビルディングの計画である。太陽があたかも西から昇っているかのように錯覚してしまう南半球では文化が違う事は言うまでもないが、建設における施行制度や考え方も大きく違い、その基本的な考え方を吸収するところから計画が始まった。

湖に隣接した敷地において最大限に光や風を享受できる形態を求め、エンジニアチームと議論しながら最小限の操作による非常にシンプルなデザインの中にある、新しさをみつけることが求められた。型枠制作の簡易性によってコストコントロールを、外壁面の出入りによって光を調整を行い、その機能の結果として現れる形態が、この場所におけるシンボルになる状態を作り出した。

あれから時が経ち、社会は以前よりも一層多様化した現在があるが、このプロジェクトで考えたこと、シンプルな新しさは決して古びることなく、内部機能が設計過程の中で大きく変動したにも関わる事なくあの時に考えた事が実現された。それは変化を受け入れるという前提から、設計をしていくということで、完成させるというゴールを目指すのではなく、むしろ育てていく建築の姿がそこには存在している。私たちは日々、未完成という完成、つまりはgrowing architectureを模索し続けている。

data

竣工

2014年03月

所在地

Canberra, Australia

用途

オフィス、ホテル、集合住宅、商業施設

構造

RC造 PRC造

階数

オフィス棟10階建、住居棟13階建、ホテル・商業棟4階建

施工期間

2010.08-2014.03

敷地面積

3800㎡

建築面積

3800㎡

延床面積

56500㎡

credit

施工

PLY Nikias Diamond

Nishi Residential Building

Design Team

Fender Katsalidis Architects

Oculus Landscape Architecture and Urban Design

March Studio

Craig Tan Architects

Don Cameron

Ken Neale

Broached Commissions

Design Office

Environmental and services design

ARUP

写真

Tom Roe

担当者

谷尻 誠

吉田 愛

大塚 亮

media

商店建築 2015年6月号