街に暖かい印象を与える“おいしい風景”
“食材を切る、焼く、炒める、味つける、盛り付ける”といった調理の過程にある火や音や香り、そして料理人の所作。鉄板フレンチ「Savie」では美味しい料理を提供するだけでなく、料理が完成するまでの風景や料理を待つ時間までを“味わい”と捉え“調理と食事”その二つの距離を近づけることで五感で楽しむプリミティブな食の体験のあるレストランを目指した。
鉄板料理の醍醐味は目の前の鉄板での調理を見る楽しさにある。調理が主役となるようキッチンを中心にそこを囲むようコの字型のカウンターを配置、マテリアルは調理で使う鉄板と同素材である“鉄”を加工したコールテン鋼で仕上げた。また同系色の砕石を調合した天板のテラゾは現場で研磨し調理の鉄板と客席カウンターに生まれた段差を緩やかにアールで繋ぐディテールに。厨房と客席とのフラットな構成や、目線が合いやすいカウンター形状で空間に一体感が生まれ料理を待つ時間の豊かにつながるよう意図した。
“鉄と錆”のマテリアルは店名のSavieとも連動しこのレストランの印象を視覚的に伝える役割も担っている。それらのカラースキームはサインやグラフィック、食器やカトラリーといったテーブルウェアにも展開させ細部の色彩の集積からなる空間の調和を図った。
錆色のテクスチャーは夜になるとオレンジ色に発光しカウンターに集う客と料理人の影を浮かび上がらせる。それらは香ばしさや湯気や香りなどを想起させる “おいしい風景”として街灯のように街に暖かな印象を与える。