動くもの/動かないもの
スタジオやギャラリー、セミナー、イベントスペース、会議室などさまざまな機能を内包するオフィスにカフェを併設させたいという話からこのプロジェクトはスタートした。目指したのは、クリエーターが「集い」そして「企む」ことを具現化し社会実装させる場。東京・渋谷という都市への接続や、与件である多くの機能に対しての汎用性の高さ、またパブリックとプライベートの関係性といった無数のレイヤーを立体的に解くことが求められるプロジェクトであった。それらへの回答として「外部との関わり、また上下階のつながりを強めるための解体」という既存躯体に対する引き算と「領域と居場所を視覚化する塊の配置」という足し算の二つの手法によって試みた。
敷地は東京・表参道のにぎわいと喧騒から逃れた裏通りに面する落ち着いた原宿エリア、大通りからのアプローチに対して角地にあたる。敷地を見てポテンシャルを感じたのは道路境界と既存建築との隙間。角地ならではのL字型の余白空間にコンクリート打ち放しでつくられた塊をいくつか配置し、外壁の一部を解体し外部に大きく開いたカフェとつなげ、「都市の余白」を活かした街との心地良い関係性をつくった。更に床の一部を開口し地下階オフィスへの動線を確保。時にスタジオやイベントスペースへと、使い方や利用者が変化するオフィスは大きな気積をそのまま生かし、上階と同様に塊の配置というシンプルな足し算によってさまざまな事象を優しく許容する居場所として活用できるよう計画した。
「動くもの/動かないもの」を丁寧に設定することで、都市に対して、また内部空間の機能に対して空間にあるモノや空間で起こるコトなどの事象が前面に表出し、能動性が喚起される環境とそこに介在する人の活動、それ自体が主役として設えとなる空間を目指した。